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アルジャーノンに花束を 最終話レビュー 

進むべきか、留まるべきか人は何度もその選択に悩まされる
逃げ出したくなるときもあるだろう
けれどそこにそこ生きる意味が隠されている

「アルジャーノンに花束を」 最終話

ママに愛されたくておりこうになりたいと願った青年の喪失と再生の物語は終りました。
最後に神は彼に何を与え、何を奪ったのか・・・

残された時間がもういくらもないことを咲人は知っている。
動きを止めない時計・・運命は回り続けている。

遥香に頼まれたという母が咲人の中に亡き夫を見て責め立てる。
それを微笑んで見ている咲人。
きっとこんな風に素直にぶつけてきてほしかったのです。あの日も。
だってママだから・・

「ごめんねって、ありがとうって」
父親の分も今の咲人なら抱きしめてあげられる。
成熟した心で、その孤独も悲しみも全てを両腕で包み込んで。

竹部社長
頭が良かろうと悪かろうと咲人の人としての本質を根っこの部分で理解してくれている。
やはりあなたは咲人の最後の砦です。

「退行が始まったら会わないでほしい・・そんな僕を君に見られたくないんだ」
諦めないでと言う遥香に黙って頷いた咲人でしたが、本当はもう退行が止められないことを分かっている。
頷いたのは遥香を動揺させたくない彼の優しさなのでしょう。

「時間との闘いではなく時間の問題なんです」
自分が元に戻ったら遥香と会わないで済むようにしてほしいと杉野に託す・・
会いたい人に、世界でいちばん愛してる人に会わないように託す咲人の胸の内は如何ばかりだろうか。

小久保と共に母と妹の家を訪れ、束の間の優しい時間を過ごす。
残された時間でさよならと言わないさよならを言うために・・
社長、遥香、家族それぞれに咲人の心の中でありがとうとさよならを。

「さくとへ
ままに あいにいかないで かわいそうだから
しゃちょうさんに あいにいかないで ひどいことをしたから」

退行した自分へ宛てた手紙
愛おしい者たちへの咲人の優しさが溢れている
ままが再び悲しい想いをしないように。
社長に迷惑をかけないように。

蜂須賀が僅かな希望を持って咲人の元を訪れましたが、もう咲人には時間がない。
咲人が超知能を手に入れてからの葛藤とそこから自分を取り戻せたのは遥香の存在だと蜂須賀に語る
「知能が低い人間が野蛮なわけではなく、知能の高い人が理性的なわけでもなく、愛に満たされた人は人を傷付けない」
超知能を持った咲人の悟り。
科学者として、一人の人間として正に成熟した咲人が導き出したレポートは蜂須賀の心にも響いたよう。

襲ってくる激しい幻覚の中で梨央のオペが終り、書き終えていない手紙の行を震える手で必死に書き留める咲人。
もう時間がない、今書かなければ・・
苦しみの中で泣きながらペンを握る咲人の後ろから、そっと手を添えてくれたのはパパでした。
優しく微笑みながら、咲人頑張ったね、もう休んでいいよと・・・

「はるかに あわないで あいしてるから」
咲人が遥香に退行した自分を見られたくないと言ったのは、プライドではなく究極の愛だったのです。
遥香を束縛したくないから、幸せでいてほしいから、彼女を苦しませないようにそっと消えていきたかったのでしょう。
愛しているから。

そして力尽きた朝
梨央は目覚め、咲人は元に戻りました。
全てを失い、彷徨い歩く咲人を見つけた遥香・・・
もう咲人には遥香が分からない。
泣き崩れる遥香にポケットから差し出したのは遥香のイヤリングでした。
キラキラと輝く遥香のイヤリング、愛おしいものの象徴だったイヤリングを遥香に返して優しく微笑んでまたひとり歩き出す。
知能を失っても、やはり咲人の優しさは失われていなかったのですね。

アルジャーノンが眠る森でママが編んだマフラーに包まれて・・・
対等のトモダチが来てくれることを信じて疑わない咲人の穏やかで静かな眠り
人を救うためにその知能を使い果たし、また無垢な心に戻っていく
それが決して不幸ではないのだと咲人は知っているから

そして対等の友達は
「咲人を迎えに行ってくる」ではなく「お世話になりました」と、仕事辞めて退路を断ち、咲人を丸ごと受け入れる覚悟を持っての対等。
眠るトモダチを見つけ、その隣に横たわる・・

咲人のノートには「しんぱいしないで あるじあのんおはかで たいとうの ともだちをまって」と
来てくれたよ咲人。対等のトモダチが。
あなたがくれた優しさが彼らをこの森まで連れてきたのです。
彼らの中であなたという花が咲いていたから・・絶やすことなく咲いていたから。

あいきょでしょバーガーきっと咲人の笑顔で繁盛することでしょう。

喪失と再生の物語。そして愛の物語。
親子、恋人、友人、そしてそれを取り巻く人々との愛の物語でした。
咲人が限られた時間の中で人の命を救い、人々の心に優しさの種を捲き、自己犠牲の愛と正義を持って、人はどう生きるべきかを教えてくれた。
勇気と愛の尊さを教えてくれた。

神は知能を咲人に与え、そしてまた奪っていったけれども、彼の中の純粋な優しさだけは奪わなかったのですね。
遥香・・・あなたを愛しているからあなたの元を去った咲人に、いつか覚悟ができたらどうそあなたから会いに行ってあげてください。

アルジャーノンのお墓に咲いた青い薔薇の花ことばは「奇跡・神の祝福・夢叶う」だそう・・
その言葉のとおりになりますように・・

素晴らしい物語でした。
原作のラストは悲しすぎましたので、こんな温かいラストを用意してくれた野島氏には感謝しかありません。
映画のようなスケール感のある映像に仕上げてくれた監督にもスタッフにも。
キャストの皆さんにも。

そして山下智久くんにやはり最大の賛辞を。
レビューを書くときには「咲人」と思って書いてますので「智が」という書き方はあえてしないのですが、最初から最後まであなたあってのアルジャーノンでした。
美しく切なく苦しく哀しく・・・そして柔らかく優しく咲人を演じてくれた智
間違いなくこの作品はあなたの代表作になります。
最高のドラマを魅せてくれてありがとう。心からありがとう。

そして毎回私の拙いレビューにお付き合いくださった皆さまにもお礼を申し上げます。
深く感謝。

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